いしかわさん
放送までに単行本45巻、長編2巻を読む。重くて半分しか持って来れませんでした。
夏目さん
「ど〜もすいません。19巻までしか読んでません。(苦笑)」
いつもとは趣向を変えて千原兄弟の2人が作品の大まかな紹介。
「3分でわかるドラえもん講座」(BGMはぼくドラえもん)
まあ、本当に大まかな説明で、ドラえもんはねずみ嫌い、ドラ焼き好き、のび太は0.93秒で眠れる、しずちゃんお風呂好き、スネ夫イヤミな奴。親戚の兄ちゃんも嫌な奴。主な道具(タケコプター、どこでもドア、もしもボックス)の紹介など。(BGMはドラえもんのうた)
さらに「どくさいスイッチ」をお勧めするアイテムとして紹介。 ひじょ〜に恐ろしい道具であるという事や、それに含まれる教訓を解説。
FAXの数はとても多く、年齢層も幅広かった様。
鈴木蘭々さん
ドラえもんは心の友。(単行本)いつ最初に買ったのかは覚えてない。
TVとマンガが違う!って事に子供ながらに一人で腹を立てていた。 岡田さん
「TVのドラえもんは許せないですか?」
蘭々さん
「なんかねえ、すごく作られた世界って感じがしてね…」
それに対し、岡田さんが、両手を手前で組み、振りながら、
「そう、そう、そうそうそうそうそう!」と共感する。(笑)
蘭々さん
「だまされてる!テレビのドラえもんには!」
大月さんが「芸能界入ってドラえもんで盛り上がる事ってある?」 との質問に
「一人だけいました。V6の井乃原君」
(大月さんだけ、やけに受ける)
「あまりマンガの話で盛り上がれる女の子がいなくて悲しかった」
千原兄弟。
ちょっとええとこの西村君が買ってて、よく見せてもらってた。アニメよりもマンガ。映画は見てた。芸人はみんな好き。
芸人5,6人で映画も見に行った。
ジャンプのパーティーに招待された時、安孫子先生とお酒飲みに行った。安孫子先生のマンガにはブラックな物が多いから「どくさいスイッチもA先生のアイディアちゃうかなあ?」などと言う。
岡田さん
「F先生の中にも相当ブラックな、ええ感じのものがあるような気が」
千原(弟)
「あれF先生から出てるんですか?」
岡田さん
「ある!絶対ある!」がはははは。
千原(兄)
「悪い2人の会話や〜、もっと楽しい話を、ふぁんたじーな話をしましょ〜よ」
岡田さん
「そんなん10時過ぎて出来るくぁ〜!!(バシッ!)ええ加減にせい!民放の普通の番組ちゃうんやぞ、BSマンガ夜話やぞ!(笑)」
鴻上さん
東南アジア旅してて、何処行ってもドラえもんがある。仲良くするにはドラえもんの話や、ドラえもんを描く。
インドネシアの中学生に「タケコプターやどこでもドアは本当にあるのか?」と聞かれて「ある!」と答えた。
「だけどすごく高い!どこでもドアは日本では2億円で売ってる、タケコプターもあるけれどつけた時首が引っ張られて苦しいんだ。だから使ってないんだ」
中学生に「マンガでは飛んでるじゃないか」と言われると、
「それはマンガだからだよ、本当は痛いんだ」
という嘘をついた話を、さも、いい事をしたように話していました。
駄菓子屋の店先にはドラえもんを描いておくとみんな来てくれる。
藤本先生の功績は国民栄誉賞どころじゃなく凄い。
アジア圏内は何処行っても見る。
いしかわさん
でも、日本のマンガだとは知らないよね。
大月さん
韓国だとこれは日本のマンガだって言われると怒られるよね。
夏目さん
イタリアとスペインではアニメ放送やってるって話聞いた。
いしかわさん
イタリアでは変だよね、空き地に土管はないだろう。(笑)
夏目さん
欧米では人気が無い。東アジアで凄い。
欧米は、セーラームーン、ドラゴンボール、頭身のあるキャラクターは受け入れられやすい。
鴻上さん
のび太の性格が影響してるんじゃないか?
夏目さん
アメリカ人でドラえもんを知らないイエール大学の奴が来た時に、日本に来て読んだっていうから、どうだい?って聞いたら、あれじゃあスポイル(spoil)されますよって言ってた、やっぱりそうなんだよ。
ドラえもんのコスプレ、世界にない
……それは日本にもない。(笑)
大月さん
ドラえもん=おばさん。
夏目さん
ドラえもん=地蔵菩薩
岡田さん
アジアで受けるのは、日本ならこういう道具が本当にありそうなリアリティーがあるから。小さい頃、何でも新製品=アメリカという図式だった様な雰囲気と同じ。
さっきのどこでもドアの話について
鴻上さん
「ああ、中学生、ため息ついてたもんなあ「2億かあ〜」って」
蘭々さん
「そんなぁ夢ないじゃないですか〜!」
鴻上さん
「中学生がお金貯めて、買おうと思うかも知れないでしょ」
蘭々さん
「買おうと思っても、無いじゃないですか〜」
いしかわさん
ドラえもんは好きだけど『藤子不二雄』っていうとやっぱりオバQや海の王子、シルバークロスの印象が一番強い。
石川進のオバQ音頭は今でも浮かんで来る。その後は大人になってからだから、40過ぎてコロコロコミックは…。
でも45巻読み返してやっぱり面白い。藤子不二雄って1つの話に必ずアイディアが入ってる。
センス・オブ・ワンダー
SFが好き。あの姿勢は凄い。
夏目さん
石川さんと年代同じ。子供と一緒につき合う。一緒に映画、良く出来てて面白い。映画だとのび太成長する、ストレス無い。
マンガは6巻までは面白い。その後は同じだからイライラしちゃう。でも藤子先生、ドラえもんは偉大。
ゴルゴ13等で劇画大人向け、確立しちゃった中で、小さい子の読むマンガの空白時期子供向け幼年向けを救った。
いしかわさん
単行本後期でも(話の)レベルが落ちてない。
岡田さん
ドラえもんに限らず、21エモン、モジャ公。アイディアの質が高い。
夏目さん
SF短編、凄くいいのたくさん描いてる
科学向けの中身。しっかりした内容、戦時中からの伝統。知識を与える時の説明の仕方が上手。
いしかわさん
その中でもアイディアがしっかりして、面白い。その力量が凄い。
岡田さん
最新の学説を取り入れたりするのが凄くうまい。新し物好きで、フレデリック・ブラウンなどSF作家のショート・ショートのつくりにも似ている。
いしかわさん
「ブラウンとかってSFマニアとかがちょっとバカにするところってあるじゃない。よく出来てるけど、『良く出来てる話ね』で済ましてる所あるじゃない。 でも良く出来ている話を45巻描くなんてとてつもない事だよな」
大月さん
他に作品もあるわけですしね。
鴻上さん
科学的よりも、語呂合わせで考え出して、科学の方に強引に引き寄せたんじゃないかと思った。
岡田さん
いや、子供向けにオブラートに包んでわかりやすく見せるために、ファンタジーの方にやや流している。
いしかわさん
スタート手塚治虫の影響、SF物の人だから根はSF
千原兄弟
人間の感情面がすごい好き。35巻「ドラえもんに休みを」から
のび太となり街の子に絡まれてジャイアンが助けに行く話を
「おお〜!ゴウダ〜!」と歓喜。ジャイアン。マンガだと物凄い悪い奴だけど映画だと主役級。
南海大冒険(1998年公開年)
「ドラえもんズ」の時は子供は劇場走り回ってる。ドラリン丸で遊び回っとるんですよ。でも「かえってきたドラえもん」はしっかり見てる。
鴻上さん
ドラえもんズみたいな変化球いっぱい投げても子供は騙されないってことね?
短編でいうと「劇画オバQ」みたいなのはたまらないですよね。
鴻上さん
劇画ドラえもんは無かったんでしょうねえ?
岡田さん
あるよ!プレイコミックの帰ってきたヒーローシリーズじゃなかったかな?
そういうタイトルじゃないけど、あった。
夏目さんもあったと。
鴻上さん
それはどの単行本にも収録されてないですか?
夏目さん
「いや、どっかで見たよ」
SF短編集には載ってない。
オバQと正ちゃんのような関係とはややちがう。ドラえもん=おばさん。地蔵菩薩
いしかわさん
目や鼻が上にあって可愛いキャラクターというのは希有だよね。
ドラミちゃんは下についてる。
蘭々さん
ドラえもん可愛いと思ったことない。可愛いとかじゃなくて、
こういう生き物。
- 幼児的想像力。
何かを見立てる。模型飛行機とか、こん中に自分が乗れて飛べたらどんなにいいだろう。と思ってた。こういう所を描ける心ってのが面白い所、挽かれる。一種の見立て遊び。
- 快不快原則
このまんがは基本的に「快不快原則」が貫いてて、気持ちいいか悪いかが基準。
てんとう虫コミックス9巻143P
「でんでんハウス」入ると怒られても平気。気分いい。幼児退行願望。道具として描けるのが魅力。
- 時間の無い世界。
「=楽園」
のび太が成長しない。殆ど昭和30年代の様な「空き地」「板べい」誰も不思議に思わない。楽園。
- モラトリアム
小学館学年誌。
低学年用、高学年用でのび太のプロポーション、コマ割から全て違う。
これが大変な物。
成長するのび太
2巻162〜3P ドラえもん、怒る。のび太、反省する。
こういった構造は解っていて、たまに入れている。
「さようならドラえもん」
ここで完結しているからこそ、東アジア人としてはこの後のモラトリアムは許せる。大人になってもこれが楽しめるのは善悪以前の子供があるというのを良しとする文化にいるからこそ。
いしかわさん
時が止まってるって話で、以前20代の女の子から聞いたらのび太の生年月日って決まってるんだってね。
昭和38年8月7日(※実際は39年の筈)
サザエさんなんかだと、過去か未来か、いつの時代なのか解らないけれど、じつはドラえもんって昭和30年代生まれののび太のたったこれだけの事を執拗に描いてたんだよね。それって凄くサザエさんと大きな差だよね。
大月さん
子供部屋が成立してないと成り立たない世界。
高度成長時期にパターンが決まってきたある意味民話的。
岡田さん
小学館にとっては「ドラえもん」だけで以後倒産する事無いようなメガヒット作。当然ながら他の出版社も「第2のドラえもん」「第3のドラえもん」を作ろうとしてる。
小学館自身も「GuGuガンモ」を始めた時に作者に「お前はこれから第2の藤子不二雄になるんだ!」って言って始めたっていう話が伝わって来たくらい。
次の「ドラえもん」どうしようか?と開発しようとしてる……、が「ドラえもん」を越える様な物にはなってない。
集英社も江川達也に「まじかるタルルートくん」あれももう!完全
にドラえもんですよね。江川達也本人が「ドラえもんをやれ!と言われたのでドラえもんをやった」と言ってるくらい。
ただ、細野不二彦や江川達也のような才能のある人がやっても「ドラえもん」が出来ない。
ただ、ようやっと今日の夕方、ふと解った!
1つだけ「ドラえもん」を唯一真似して成功した作品があるんです。
それは何かと言うと「こち亀(こちら亀有公園前派出所)」なんですよ。
みんな「ドラえもん」を真似して作品を作ろうとする時にフォーマットを真似する。そのフォーマットは、
・子供が主人公
・色々便利な物を持ってくるおばけみたいな物が来る
ドラえもんの本当の基本構造というのはそれではなくて、
・基本として欲望に弱い奴がいる(快楽原則)
・その回りに怒る奴、言いなりになる奴、おだてる奴、便利な物を持っている奴が来る。
この構造で成り立っている。
「こち亀」って、今まで『あれはドラえもんだ』と見抜かれないまま同じ様な永劫回帰おんなじ時をずっと過ごしてやってると。
いしかわさん
大人と子供だから気づかないけど、それは言えてるかも知れない。
岡田さん
ドラえもんでのび太って1巻につき一回くらい反省する。
でも成長しない。
こち亀も1巻につき一回くらい両さん、反省していい人になる。
でもやはり繰り返し。
両さんっていうと昔、子供の頃の話は昭和20年代なのに、話の中では最新の玩具とかがガンガン出てくる。誰も不思議には思わない。
俺、これを思い付いた時に、これを言ったら夏目さん喜んでくれるに違いない!って。(笑)
いしかわさん
いやあ〜、それはおもしろいよね〜。
ドラえもんとこち亀グループと細野不二彦、江川達也グループってこの2つの大きな差は「邪気」があるか無いかの違いじゃないか。
(笑)
「一発当てたるわい!」っていうのがあるかないかの差じゃない?
岡田さん
やっぱり、漫画の中で自分を表現しようというモノが強かったら「ドラえもん」は作れない。
大人が子供のために描くっていうポジションが無いとつらい。
鴻上さん
クリエイターとして強くないと、これだけの量を描き続けられない。
蘭々さん
子供ながらに、きっと藤子さんはこういう人なんだって本当に信じてました。のび太なんだあ。
こういう無邪気な人。
千原弟
安孫子先生とお話した時に思ったんですけど、芸人の同じ歳(60)くらいの大師匠の喋りよりよっぽど面白い。
子供相手してた事からか、とっても若い。
手塚先生に始めてカツ丼おごってもらった時の話など、カツが食べられないので見てない内に全部2階から捨ててたら、3つ目捨てた時に「きゃ〜!!」って悲鳴が聞こえたとか。普通に笑える話をするのが凄くうまい。
いしかわさん
藤子・F・不二雄(自身)はそんなに面白くないと思うなあ。(笑)
トキワ荘に住んでいたそれぞれのマンガ家の自伝やコラムとかを読んでいると、お金が欲しいって事よりも、とにかく作品を作りたい、子供に読ませたいっていうそういう意識が凄く強い。
岡田さん
「夢カメラ」や「未来の想い出」とかある程度大人向けの作品見ても子供にも解りやすいようにしっかり出来ている。
いしかわさん。
ドラえもん、どういうシステムで描かれたのか不思議。
7巻とか見てみると恐らく全部藤子不二雄描いてない。アシスタントかスタッフの絵だと想う。(いしかわさんの主観)
アイディア、ストーリー、構成、絵、一体どういう風に描いているのだろう?
その辺の分担は判らない。
夏目さん
一般的に、マンガ家が自分で描かないと悪い事の様に見られるけど、実際はそうじゃない。料理人の板前の様にしっかり見ていれば絶対そのテイストになる。
岡田さん
全部自分で線引こうとすると士郎政宗みたいにオリンピックみたいに4年に1冊しか本出せない。(笑)
いしかわさん
ドラえもんの単行本、絵のレベルのバラつきはあるけど、マンガとしてのレベルのバラつきは殆ど無い。
手を抜いているとかじゃなくて、こんなにたくさん藤子不二雄がきちんと見ていたって事が素晴らしい事なんだよね。
大月さん
スピルバーグがこれ撮ったって、きっと面白いもんになりませんよね。
どうしても成長させるじゃないですか。
岡田さん
手塚治虫はアメリカ人は作れるんですよ。ドラえもんは作れない。
蘭々さん
子供の頃は何気なく読んでたけど、大人になって改めて読んでみると、結構キツイ事(ブラックな)が描いてる。
FAXを読んでとりあえず終了。
ここでドラえもんとは関連は無いですが、このシリーズ初日に放送した『デビルマン』の回にて、いしかわさんが「本人は描いてない」という発言に対して永井豪さん本人が直々にクレームをつけてきてビデオ出演。(笑)
随分間違ってる事があるんで訂正しようと思って出てきた。
最初はアニメとのタイ・アップがあったのである程度遠慮して描いていたが、途中からマンガの方は独自に行ったから絵柄が変わった。
最初と最後では別人の絵の様に見えるかも知れないが、最初から最後まで自分で描いた。
いしかわさんは、僕が人任せで絵を描いてない様な事を言われてましたけど、そんな事でマンガ家続ける事なんて不可能です。
ダイナミックプロは講談社からも近い所にあって車で10分。夜中でも編集者がよく来る。人任せで描いていたらすぐバレてしまう。
さらに、つい今朝まで自分で描いていた原稿を見せ、こういう形で30年間やってきてますんで、そんな人任せにマンガなんて描けないって事
、マンガ家のいしかわさんがどうして判らないのかとても不思議。
扉絵はアシスタントは一切使わないで全部一人で描いてます。スクリーントーンから仕上げからアシスタントには渡すのは嫌で全部自分で描いてます。
岡田さん
いしかわさん、どないですか?(笑)
いしかわさん(カメラ目線)
「え?い、いや〜、永井さん、永井さん、俺べつに、永井さんが何もしてないなんて言ってないですよ。(苦笑)」
これこれ…(笑)
BSマンガ夜話の中でもちょっとしたハプニングとしても有名
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